江戸城で森家印探しの旅

       

『江戸図屏風』の江戸城天守閣
国内最大の天守閣
でも、明暦の大火で全焼。

2010年5月29日(土)-30日(日) in 江戸 

■ 2010年5月29日(土) 江戸城ふたたび


 去年のシルバーウィークに江戸城へ夕方4時くらいに行った時は、最終入城時間を過ぎて中に入れなかった。さすがは江戸城だ。

 それが悲しくてもう一度江戸城へ行く機会を狙っていたら、幸運にも仕事で江戸出張の機会がめぐってきて、ホテル代さえ補充すれば会社のお金で江戸に行くことができることになった。

 前回、江戸城で一緒に貴重な門前払い体験をした森家好きの愛平さんとは今回も一緒に回れることになり、さらに嬉しい。
 で、私は仕事を金曜日に済ませ、真の目的である史跡めぐりを森忠政屋敷跡からスタートさせた。忠政は江戸城からさほど遠くない丸の内ポジションに屋敷を許されたが、その敷地はほぼ東京駅。ありし日の忠政の大事な思い出がいっぱいつまっているだろう場所に、今は容赦なく電車が通過する。
森忠政屋敷跡周辺(丸の内1丁目)
東京駅は工事中で、もはや「これは東京駅で
すから。」と念を押さないと何を撮影したのか
わからないかんじ。

 愛平さんと合流して江戸城散策開始。
しかし、まずは大手門に入る手前の和田倉門の休憩所で百名城スタンプを押す。今までたくさん押されすぎてスタンプ面が摩耗していたのだろう。なんかえらくダークな押し味になった。

 江戸城へは、大手門から入った。

江戸城大手門
諸大名はここから登城した。

 入るのは無料だけど、入り口で一人一人に札を渡される。この札を出る時に返却して、もし閉門時に返却枚数が足りなければ、「まだ城内に人がいる!」と、警察官に捜査されるようだ。
 今となってはこの江戸城も宮内庁の管轄で皇居外苑であるから、ほかの城とまるで勝手が違う。警察官が城内でパトロールして厳しく見張っているのだ。城内をパトカーが走ったりもする。
これは、某宗教施設となっていた丹波亀山城(本丸は聖域)訪問の時よりも高いハードルを感じる…。

 そんな江戸城は、森忠政も普請手伝いをしているので、石垣の所々で森家を示す刻印が見受けられるのである…と、本に書いてあった。
 江戸城ビギナーの私にとっては、持ってきた

◆『石垣が語る江戸城 (ものが語る歴史12) 』野中 和夫 同成社 2007年3月
石垣が語る江戸城 (ものが語る歴史)
だけが頼りだ。
これには、どのゾーンにどんな刻印があるのか書いている。
 今日の目標は、忠政を偲びつつ、江戸城の石垣に目を凝らして各ゾーンにある森家刻印を自分の眼で確認するに尽きる。

 と、いうことで早速、大手三の門あたりの石垣を間近で見ていたら、豊富な種類の刻印が山のように刻まれている。この中に森家のものもあるのだ!探せ!
と、石垣めがけて直行した15分後くらいには、警察官に駆けつけられた。

…(思い出したくないので中略)…

大手三の門に連なる石垣
非常に沢山の刻印があった。
「△坂」(右上画像)や加藤清正のハンマー(右
画像)、「さら川」などの刻印は次々と見いだせ
たものの、肝心の森忠政の刻印が見極めきれ
ず、その前に警(後略)


 色々と動揺し、何を見てもビクビクしながら再び城内を散策をする。

 梅林坂に伸びる石垣にも森家の刻印があるらしいので、青く茂る梅の木に頭を突っ込みつつ石垣の様子を探る。この季節、梅の実がいい感じになっている。
 警察に梅の実ドロボーと思われてしまったら嫌なので、目線は常に梅ではなく、さらにその奥にある石垣たちに向け、本当に石垣が大好きな人のリアクションをあらゆる所作に組みこみつつデジカメで撮りまくる。
 結局、刻印は色々と見つけたが、またしても森家の刻印としてはっきりと判るものを見つけ出せなかった。森家が使っている「十」の刻印はあったけど、森家が商標登録していなかったようで他家もこの刻印を使っているらしく、森家のものという決め手がない。
 もっと見たかったけど、どうにも茂った梅の木が邪魔だ。木が葉っぱを落とした季節に双眼鏡持参で見にくるといいのかもしれない。その時は『アイラブ江戸城』『江戸爆風』と書いたTシャツを素敵に着こなして、頭にシャチホコを搭載するくらいの演出をして、警察から見ても「あれは城好きさんだから怪しい動きをしていても安心ね。」と、丸わかりの状態にしておきたい。

梅林坂
太田道灌が天神様を祀って梅を植えたという。

 場所を移動して天守台を見た時はナニコレ?
だった。一言で言えば、あまりにも巨大すぎて呆気にとられてしまうのだ。しかも焦げてる。

天守台跡
 油断のない石垣の精密さと巨大さに驚かされ
るばかり。
 家康が作った最初の天守閣から場所が移動
しているとのこと。
本丸御殿跡の芝生
本丸の中は、身分や格式で入っていい部屋が
厳格に分けられていた。


 本丸跡は広場になっていた。
大名たちが極度の緊張を強いられたこの場所が、今は何もない憩いの草原広場。今日はどんよりとした時々雨の天気なれど、草原に腰をおろして、在りし日の森忠政を忍んだ。
 ところで、そんな草原にあった「もぐら塚」の意味がわからず、その時は、しばしこれが史跡かどうかで悩んだ。

モグラ塚
 モグラが土を掘り排出した土の山で,周辺には
通路があり,陥没する可能性がありますので,ご
注意ください。


お昼ご飯には、丸の内のどこかで一風堂博多ラーメンを食べた。さすが東京のラーメンはとんこつ味で美味しい。
雨模様になったが後半も、江戸城探検の続きをした。

 実は私は、江戸城に対してもっと大いなる野望がある。
森忠政が寛永5(1628)年にお茶した場所、西城に入りたい。
しかし、西城と呼ばれる江戸城の西側の領域は現在、思いっきり皇居なのである。中に入るには皇族になるとか、宮内庁職員になるとか、総理大臣になるとか、国民栄誉賞を取るとか…どうすればいいのだろう。
 私でも可能な無難なチョイスでいくと、お正月と天皇誕生日の一般参賀を狙うしかないのだろう。

 と、いうわけで西城については今回は、外から眺めて雰囲気を感じるだけで我慢せねばならない。
 ちなみに、西城の入り口の西の丸大手門の石垣にも森家の刻印があるという。しかし、やっぱりそこはTVでもよくお目にかかる皇居の入り口なのであり警備が厳重だった。

 やっぱり江戸城の石垣を楽しむには双眼鏡が不可欠である。次回は持参しよう(結論)。

江戸城西の丸大手門(皇居)
TVでこの石垣を見るたび、別の意味でキュンと
なる我。


 場所を移動して清水門へ行った。ここにも森家の刻印があると本に書いてある。
ここは江戸城中心部から離れていて、出入り自由でもはや警察も立っていない。ようやく江戸城に安住の地を見つけた気がする。ここで暮らそう。

清水門・忠政刻印のあった石垣面
建物については1658年の再建。
肝心なのは牛ケ渕に面した石垣にある
森家の刻印である。

 緊張感から解放されて、愛平さんと思うままに森家の刻印探しに没頭した。
石垣に近寄っても叱られない。刻印を指でなぞっても警官に射殺されない。

 しかし、見ればみるほど、石垣には色々な刻印があっちこっちにあって面白い。UFOの刻印は誰に帰属するものだろうか。

清水門周辺の石垣の刻印
UFO発見! 何のマーク? 1つの石に3つも刻印
前田家 浅野家 加藤嘉明


 東京の街で、石垣を見つめて「ない、ない!なんで?」と朝から探し続けた森家のかさね山の刻印。一つでも見ないことには、私は国に帰れないよ…。
 しばらく手分けして石垣をめぐっていたが、ついに愛平さんが牛ケ渕のお堀の面の石垣から探し出してくれた。

森忠政の「」2つのかさね山と「十」


 一度見たらもう目が離せなくなるようなかさね山。
津山城でも、大阪城でも、篠山城でも市ヶ谷でも目にした刻印がここにある。
でかした!愛平さん!

 ようやく見たいものを見た安堵感を覚えて、後は森家の刻印が無いらしい田安門などを見学しに歩いたが、また、石垣を見ていて若いお兄さんに立ち塞がられた。
警察ならまだしも、普通の人が私達を阻むのか!君たちは、一体何を守ろうとしているのだ!
Σ(゜□゜

 直後に理解した事だが、田安門近くの武道館でミッチーがコンサートを催していたらしく、石垣側の武道館へ侵入する細い道に入るなと通せんぼしていたようで、石垣にしか興味がない私には、なんじゃそりゃ!と…警察じゃないから内心強気である。

 徒歩でぷらぷらと丸の内に向かって歩いた。
途中、平将門の首塚にもお参りした。
何というか、心霊特集なんかでよくこの首塚の映像、画像が取り上げられているのを見るが、実際に行くと、高層ビルの間の狭い狭い空間に首塚があって、気の毒感たっぷりだった。
そして首塚の周辺にカエルの像がたくさんある。森忠政と一緒で、平将門もカエル大好きなのだろうか。
 後で調べると、転勤などで東京を都落ちするサラリーマンなどが「また東京にカエル!」という願いをこめて将門の首塚にカエルの像をお供えするそうだ。

…今日は東京で石ばっかり見ていたよ。
高層ビルなんて目に入らなかった感じだ。

 夜は憧れの八重洲ブックセンターへ。
本好きならシビれてしまいそうなビルまるごと本棚の超・大型書店だ。
そこで森忠政の江戸屋敷も載っている『寛永江戸図』を見つけた♪『戦国武将兜百撰』にも森可成と長可の兜が載っていたので買った。
我ながら東京で何とよい買い物をしたのだろうか。

 愛平さん、まる一日、歩きっぱなしでつき合ってくれた上に待望の森忠政の刻印を見つけてくれて、どうもありがとう!m(_ _)m

■ 2010年5月30日(日) また江戸を歩いて回る一日  

 今日は一人でこの東京をめぐる。今日も東京をあり得ないくらい健康的に過ごしてしまう予感がする。

 森忠政の預かっていた朝鮮出兵の時の捕虜の女性のお墓が「江戸アサブの中道寺にある」と『森家先代実録』に残っているので、そのお寺を確認しに出かけた。
とは言っても、「江戸アサブ中道寺」なる寺の確実な場所が判らずに、唯一ネットで引っかかる荻窪の中道寺に朝からお参りしたら、お寺の方に、そのような話は伝わっていないし、朝鮮の方の墓はない。そしてここは麻生じゃないです、と回答いただいて、しょぼーん!
こことは別に「中道寺」というお寺があるのだろうか。それとも寺の名が違うのだろうか。
この謎はまだ追い続けねばならない。

----------(ここから18行間は森家とは関係ないです。)--------------------------------

 いったんホテルに戻って、お昼ごはんを食べてからチェックアウトをしてキャリーバッグ持参で靖国神社を参拝した。森家には関係ないが、やはり日本人としては訪問したい場所であった。
 靖国の場所は昨日、近くまで来てチェック済みだったので九段下駅というのが最寄駅ということも判明していた。
 でも、いざとなると宿泊宿のある東品川から九段下への行き方がまるで判らない。ホテルで路線図をもらっても、私にはそれがカラフルな蜘蛛の巣にしか見えない。
 こんな時こそ手持ちのiPhoneを活用しようということで、ナビを頼りに靖国に向かえば、iPhoneにおかれましては『飯田橋駅で下車コース』をお勧めされて、「あれ?九段下は違うの?」と思いながらもどうすればいいのかわからずに私は飯田橋で下車し、靖国神社までの1キロ以上の道のりをキャリーバッグを引きずってしばらく歩き続けた。舗道の敷石がデコボコしていて一々キャリーバッグのコロに引っかかるので、かなりイライラさせられた。

 靖国神社にたどり着いた時には、疲れも吹っ飛び、その鳥居の大きさに圧倒されるばかりだったが。
周囲を見れば、外国の方もたくさん参拝されてるのだな〜。
 うちは祖父の弟達が激戦地で戦死しているので、いつかここへお参りしたいと常々思っていた。それに、会いたいのだ。
かつて九州国立博物館のオープニングで展示されていた衝撃の靖国神社就遊館のウサ耳兜に!!!
ウサ耳兜↑
戦国武将がかぶって
いたと思われる。

 合祀者の遺品などを収蔵してある就遊館。そこには織田信長の兜も展示されていたので思わぬお得感もあった。けど、ショーケースの中には再会を望んでいたウサ耳はいなかった。大友宗麟の大砲・国崩しもあるという話を聴いたけど、それも展示されていなかった。

靖国神社の鳥居
ちょうど、右な方々が集結なさってました。
就遊館
戦国時代の宝物も展示されている。

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 次は両国にある江戸東京博物館に行った。
夕方になり、閉館時間が迫る中での見学だったけどお江戸の水道事情や大名生活なんかも展示を見てよく判った。「大名屋敷地図」に森家の名前があったりすると、自然と顔もほころぶ。
 将軍さま「拝謁の儀」のビデオを観た。
 大名たちが江戸城に大集合してのご挨拶。

将軍様は大大名の前田家、島津家、身内大名などは別の部屋に入れて特別に軽くお話する。
後の大名はでっかい部屋にムギュと詰めこんで無言のご対面。
部屋のふすまが開いて隣の部屋の将軍様が現れたかと思えば5秒くらいでふすまが閉まって拝謁終了。
大名たちは平伏したままなので頭をあげて将軍を見る事はない。だから目の前に実は将軍様ではなくポリンキーが立っていたとしても気づくことはない。

Σ(゜□゜;
うぉーーー!!!俺たちの関ヶ原は何だったのだろうか!

江戸東京博物館
江戸のシステムや大名の生活、習
慣など、色々なことがわかる。
寛永の大名屋敷(撮影OK)
越前福井藩主・松平伊予守忠昌の上屋敷の
1/30模型。

 そんなこんなで、博物館内で楽しんでいる途中に閉館を迎え、羽田空港に向かった。
空港に着けば飛行機に乗る時間の1時間半前。
もう疲れてぐったりしているので、とっとと福岡に帰りたくなってきた。
空港のフロントで、「次に乗れる一番早い便に変更してください。」と、お願いして「7時の便でよろしいですか?」なんて回答もハイハイと聞いて発券し直してもらったら、次の瞬間、
では手荷物検査へお急ぎください!!(゜□゜」
と、私が全力で走って手荷物検査に行く事を促されて、時計を見ればなんと離陸の15分前!!(◎_◎;)

お土産屋を見る時間もなく、これで乗り遅れたらマヌケすぎると、もう慌ただしい限りで搭乗した。

ようやく江戸城の中にも入る事が叶い、今回も楽しい旅だった。
今度は双眼鏡持参で江戸にカエル。