母への思慕に似たり 森忠政が幼い頃、養子に入るはずだった原田の家。 養母の人”大野木殿”は柴田勝家の娘。 しかし時勢に養子の縁は立ち消えて、 ニ人は別々の人生を生きる。 やがて柴田は賤ヶ岳に滅び、 大野木殿は忍び暮らしに実の息子も殺され、 零落の日々のうちに余生を過ごす。 それから実に二十数年後、大名家の使者が彼女を訪う。 津山では、森家の人々が大野木殿の到来を待っていた。 その人を母と呼び出すは懐かしき森忠政。 かつての小さな坊やは、もはや美作一国の主。 その血のつながらぬ息子の愛を受けながら、 大野木殿は津山城内に余生を過ごし、その死後も 忠政により実の母同様にして手厚く葬られた。 |