落花枝に帰らず
破鏡再び照らさず
然れどもなほ妄執(もうしゅう)の瞋恚(しんに)とて
戦に死した武士の魂魄は、この世に残した怒りの執念に引かれ
深い苦しみの中をさまよい続け やがては修羅道に落ちてゆく。 負けし者は自然のこと、
勝ちし者はなお救われぬ。
それが武士に生まれし者の運命、罪業深き亡者の道。
蘭丸の魂魄はただ、優しき母の念仏を待つのみ。