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次郎屠(ほふ)るべし 次郎は病の床の中、あらぬ人馬の音を聞く。 闇を突き進む池田・森軍総勢2万5千の怒涛の行軍。 狙いは三河の王土。 次郎の守る小城には眼もくれずに過ぎ行かんとす。 敵に素通りされるは家の恥。敵を見過ごすは己の恥。 城兵僅(わず)かと知りつつも 次郎は岩崎城の門を開き、寸土の砦より鉄砲を放ちて 天下の合戦に名乗りを挙げた______。 池田と森軍の鯨波は、たちまち城を呑みこむ。 城兵300余名は全滅し、城内は血の海と化す。 丹羽次郎氏重・享年16歳。 この少年の数刻の足止めが、天下の趨勢を狂わせ やがて森長可を死へと誘(いざな)う。 |