浅きたくらみ 長可に遠し

     

 本能寺の急を知り、信濃川中島の所領を捨て、金山に馳せる森長可。

 一方、この機に乗じて千旦林に長可を屠(ほふ)らんと

 ほくそ笑みて謀り合うは信濃・美濃の諸将ども。


 知りて長可、ここを先途と自ら策略の地に踊り入る。

 

 怒々と軍馬をかき鳴らし、電光石火の如くに飛びこむは木曽福島城。

 慌てふためくは朝(あした)見るはずの長可を宵に迎える謀略者。

 長可、驚愕の間に子を盗み、無事、金山への道を切り開く。
  

 見よ、悲しみを胸に秘め、陰謀を鮮やかにかわす長可のしなやかさを。

 群狼どものいかに一意専心に長可の生(しょう)あることを憎めども 

 信長公すら飼いならせぬこの鬼を、いかで破ることならんや。