糸たぐりよせし先にあるもの

 父・森可成の討死した近江国・坂本。その地を継いだのは、明智光秀。

 その遺児を葬り去る運命の道すがら、光秀は坂本領内の可成菩提を手厚く守りきた。

 光秀の由来する美濃国・明智。金山よりその地を押さえたのは、森一族。

 未来の反逆者を育んだ大地を、いつもその視界におさめながら、蘭丸は成長してきた。
 
 _______すでに因果はめぐっていた。

 「坂本は蘭丸殿の大事な父君の旧領、この光秀、肝に命じて治めさせていただく。」

 「私の育った金山より、明智の里がよく見えました。そのせいか、他人とは思えません。」

 
 お互いをいたわり合うような、気遣いしあうような温かい関係。

 しかし、運命は2人がつむいだその糸を二つ裂きにし、

 ついにはどこまでも対極に分かち合った。

 気づけば信長という男を中心にして、二人は反逆者と忠臣の名の元に立っている。